No.43 Creston Electric Instruments KEN YOKOYAMA’S SARAH RYAN CUSTOM
name: 51
まさかぼくがテレキャスタイプのギターを持つことになるなんて!
かつてギター・マガジン誌で連載していたぼくのコラムを読んでくれていたような方々は、こんな日が来るとは想像だにしなかったことでしょう。。事あるごとに「ストラトとかテレキャスとかの Fender 系のギターは弾けません(メソメソ)」って言っていましたからね。自分でも一生弾かないだろうと思っていました。
その理由は明快。Gibson 系のギターはネックとボディーに角度がついています(一部のギターを除く)。Fender 系のギターはネックとボディーに角度がついていません。つまり「ヘッドからボディーのケツまで(ほぼ)まっすぐ」なんです。Gibson 系のギターを弾き慣れているぼくが Fender 系のギターを弾くと、ネックがすごく前にいっているような感覚になるんです。なかなかの異世界なんですよ。「もし弾いてもいまさら慣れないだろう→苦手」になっていました。「弾きたいけど弾けない」という意味で「Fender 系のギターは弾けません(メソメソ)」だったんです。
この出会いがあるまでは……。
2020年のある日の夜中、「なんかおもしろそうな、日本では誰も弾いていなさそうなブランドとか工房、ないかなー」とネットで検索しておりました。ぼくはこの時、箱モノのギターを製作しているところを探していました。その当時メインで弾いていた Gretsch 系であったり、Gibson の ES 系であったり、そんなようなノリでユニークなギターを作っているところはないかな、と思っていたわけです。
その中で偶然見かけたのが、この「Creston」というギター。色合いの良さに惹かれ、Webページをくまなく捜索しました。……うーん、箱モノは作ってなさそうだねぇ。それどころか、どちらかというと Fender タイプのギターを製作しているブランドのようです。これはつまり、ぼくが探しているタイプのギターはないどころか、苦手で手を出せないタイプのギターしか作っていない、ということです。
しかしハンドメイドで作られているそのギター達、施されているペイントが個体によって全部違っていて、全てが一点物なんです。絵が描かれていないギターの色味も独特でとても良いのですが、なにしろ絵がもう……。オールドアメリカンな感じと言うのでしょうか、とても温かみのあるタッチで、めっちゃ心を奪われるんです。これをギタリスト語に翻訳すると「うちにも1本、この絵が描いてあるギターが欲しいね」になるわけです。あらら、ギタリスト語って都合良いんですね!
まぁでも……ねえ?もともと避けてきたタイプのギターを買っても、結局弾かなくなるわけで、ねえ?値段をみると、決して安くはないし。しょうがない!しょうがないんだ!見なかったことにするのさ!こんなことは、ギター探しをしてたらしょっちゅうあることなのさ!ここは「ご縁がなかったんだ」と思ってあきらめるのさ!
あきらめる前に、Webサイトからメールをしてみましたwwwwww だって本当はどんなタイプのギターでも作れるのかもしれないし!勝手に自分の中で決めつけてしまうには、これはあまりにも惜しい!作ってないなら作ってないと、本人の口から聞きたい!!
健「ハーイ、ぼくは日本から君のサイトを見ているんだ。質問があるんだけど、Gibson の ES系のような箱モノは作っていないかい?」
返事はすぐに来ました。
Creston (以下 C)「ごめん、作ってないよ。」
wwwwwwwwwwww
これでスッキリしましたよwwww
まぁそりゃそうなんですよ。例えば Fender 系と Gibson の Les Paul 系のような2つの違う構造のギターだとしても、いわゆる「ソリッド」と呼ばれるものであれば、同じ工房で作ることは決して無茶ではないんです。しかし箱モノとなると、製作のノリがめちゃくちゃ違う。ある程度大きなブランドなら両立は可能なんだろうけれども……という感じだと思います。
まぁスッキリしたんで、メールバックしておきますか。
健「オッケー、そりゃそうだよね。もし箱モノの可能性が少しでもあれば、と思って聞いてみただけなんだ。ありがとう。」
C「箱モノは作れないけど、もし Gibson のようなデタッチャブルネックのギターが好みなら、こういうものなら作れるよ」
そういって写真を送ってきてくれたんですが、それにはあまりピンと来ませんでした。
健「うーん、あまりタイプじゃないなぁ。それはいいや。」
C「オッケー、またなにか質問があったらメールをくれ。」
連絡はそこでいったん終わりました。……しかしその後数日たっても、素敵なペイントを施されたギターが頭から消えてくれません。
健「ハーイ、また日本の健だよ。」
wwwwwwwwwwwwww
どうしても Creston のギターが欲しくなっちゃったぼくは、可能性を探っていたんです。そしたら良い落としどころを見つけちゃったんですよ!!
箱モノ全部に、というわけではないんですが、ほとんどの箱モノの表面には「Fホール」という穴が空いています。そこに空気が入り込むことによって、箱モノ独特の「エアー感」といわれるフィーリングが出るわけです。箱モノが箱モノたり得るわけです。
Fender のギターに「シンライン」というモデルがあります。簡単にいうと「箱モノの要素を持ったテレキャスター」なんです。シンラインは、ボディーの半分がザグられている状態、つまり「半分だけ箱モノ」なんです。そして Fホールが空いています。
シンラインタイプ……これ、よくないっすかねぇ?……これは我ながらひらめいてしまいましたねー。テレキャスタイプを作っている工房なら、多少手間はかかったとしてもシンラインなら作れるはず!
しかし本当に必要なんですかねぇ?ここからぼくは自分の第一言語である「ギタリスト語」で話すので、もしかしたら理解不能の方も出てくるかとは存じますがご容赦ください。
「……まぁね、ライブで弾かないとしてもね、1本くらい家での練習用だと思えばね、苦手なタイプのギターを克服するっつー意味でもね、決して悪いことじゃないしね、それに Fホールが空いていればもともとの狙いから大きく外れるわけでもないしね、それにあの絵がペイントされているわけで、仮に弾かなかったとしても眺めていればいいわけでね、例えば友達が来た時なんかにも、テレ持ってたんだ!いつの間に!まぁね、ライブでは弾かないんだけど家弾き用でね、めっちゃ素敵なギターじゃん、まぁね、オーダー品で一点物なんだよね、ライブで弾かないのもったいねー!オレがライブで弾くから貸してよ!あーーーそれはやってないんだよねぇ」wwwwwwwwwww
健「じゃあ、シンラインタイプのギターは作れる?」
C 「あまり作らないけど、できるよ」
やったー!交渉成立!!
それからギター本体の細かい木材やパーツ選びなどに移りました。
そこで「あのペイントはしてもらえるのか?」と聞くと、「うちのあのペイントは、友人の Sarah Ryan に頼んでるんだ。料金もペイント代として加算されるよ」とのこと。
あのペイントはマストでしょ!!もちろんオッケーしました。しかも Sarah はあまり細かい要望を聞いて描かないので、最低限のぼくのヴィジョン「ベーシックは青系がグリーン系、そこにトロピカルな花を配置して欲しい」これだけを伝えました。
さてオンラインで前金を入金したら作業開始!あとは完成を待つだけ!!
……数日して Creston からメールが。
「Sarah が Fホールが空いていると絵の配置が難しくなるっていうんだ。私は健にとってエアーサウンドが大事だということは良く理解している。だから中身はサグるけれども表面に Fホールは付けないっていうのはどうだい?私もその方が絵を活かすためには良いと思うんだ。」
……これはつまり、箱モノでもシンラインでもなく、ただ中身がザグってあるテレタイプ、ということですよね?ブレブレやーん!!なんか最初の考えと違うやーん!!確かに Fホールが空いていなくても、中が中空構造(今回は半中空構造)であれば、エアー感がゼロになることはないですから、理に適った提案ではあるんですけどね。
しかしここまでプロジェクトが進んできて、「うーん、じゃあキャンセルで」という選択肢はぼくにはない(キリッ
箱モノの可能性から話し始めたはずが、いつの間にか半中空構造ではあるけど見た目はいたって普通のテレタイプを注文することになってしまいました。
この経緯はズッコケですwwwww
そして注文から4~5ヶ月で届きましたかねぇ?箱を開けるまで、どんな色の、どんな絵が描いてあるギターか知りません。ドキドキしながら開封。出てきたのはジャジャーン!綺麗な青をまとったこいつでした!!
名前は「51」。ボクが51才の誕生日を迎えた数日後、2020年の10月5日に届いたので「51」となりました。読み方は「ゴーイチ」ですね。なんとか剛一さんとかなんとか豪一さんとかいらっしゃいましても、関係ありませんので悪しからず。
しかも、テレキャスターが出てきたのは1951年なんです。前年の1950年に「ノーキャスター」という名前で発売が開始されましたが、なんとその「ノーキャスター」という名前は Gretsch のドラムとして登録商標されていたんです。Fender は名前を変更せざるを得なくなり、あらためて翌51年に「テレキャスター」として発売された、という経緯があります。なのでテレキャスターの公式なリリース年は1951年なのです。
その「51」も少しかかっています。かける必要性を感じないと思うでしょうけど、かかっています。
さて仕様を見ていきましょう。
ボディーはアルダーで、先述の通り1弦側のボディー内部がくり抜かれていて「半中空構造」になっています。ネックはメイプルですが、めっちゃ柾目ですね!平目より強度が強いとされています。フィンガーボードはローズウッド。ぼくが弾くテレキャスタイプは、この組み合わせが一番なんです。
ピックアップは Creston がよく採用している「Lollar」というピックアップです。入手当初はリアも Lollar だったんですが、 Seymore Duncan の JB のテレタイプ用、TREMBUCKER に変えました。通常のテレキャスターはフロントもリアもピックアップはシングルなんですが、ぼくは注文時に「フロントもリアもハムバッカーで」とリクエストしたんです。
そして独特の存在感を醸し出すヴィブラートシステム、まぁこれはぶっちゃけ Bigsby のコピーモデルですね。通常テレキャスターに Bigsby を搭載したい場合は Bigsby B50 というものを付けます。そのコピーです。しかしテンションバーのところに溝が切ってあって、ちゃんとストリングガイドになっているのが本家と違う点です。
あと、ボリュームとトーンのノブがおもしろいですね!プラスチック製だと思うんですけど、なんかペットボトルの蓋みたいじゃないですか?しかしちゃんと「Volume」と「Tone」って書いてあるんですよ。こういうタイプのノブは、どういったタイプのギターに需要があるんですかねぇ?最初はこのパーツがあまり好きじゃなくて、交換することも考えましたが……なぜか今では愛着が湧いています。
ちなみに、サドルが乗っているブリッジプレートですが、通常のものよりも短いですね。ここもこだわりなんですが……テレキャスターは先述したように、通常はピックアップはシングルです。それでこのブリッジプレートがリアピックアップを取り囲むほどの大きさでついています。デカくて存在感のあるパーツです。
なので例えばテレキャスターのリアをハムバッカーにしたい場合は、このようにブリッジプレートを短く切るか、あるいはブリッジプレートをなくして別のブリッジ/テールピースを装着する、ということになります。
ぼくはブリッジプレートの存在感に惹かれたので、短く切ってもらう方をお願いしました。
そしてそして、Sarah Ryan による手描きのペイント!!表はもちろんのこと、ボディーバックにも一面絵が施されています。さらには細かいところですが、ギターヘッドにも、そしてネック裏のヒール部分にも!こういうところにちょこっと絵を入れてくれるのが嬉しいですね。
この風合い、たぶん日本人の絵描きさんではなかなか出せないんじゃないでしょうか。似た感じのものを描ける人もいるんでしょうけれども、ちょっとリアルさに欠けるものになる気がします。こういったものは「生まれた場所の文化と紐付いている感性」な気がします。ぼくの一番のお気に入りは、ボディーバックに描かれたハチドリです。ハイビスカスの蜜を吸いに来るハチドリ……めっちゃトロピカルでエレガントでイノセントでラグワゴンじゃないですか。
「SR20」という手描きの文字も見えますね!まさしく Sarah Ryan 2020年作を表しています。こういうのも一点物ならではの素敵さですね。
ネックプレートにも「CRESTON 2020」と刻印がされています。
ちなみに、写真を撮ってて実感したんですが、こいつ色が全体的にくすんできてますわ!入手してまだ5年とちょい?でも少し変色しましたね。入手直後はもう少し鮮やかさがあったと思うんですよ。なんか、ほんのちょいなんですけどね、グリーン方面に変化した気がするんですよねぇ……。
ブルーのギターのうちの数パーセントはグリーン方面に褪色すると聞きます。これはラッカー塗装が黄色に変化してブルーと混ざって「ブルー + イエロー = グリーン」というわけです。ブルーのギターのほとんどはペルハムブルーのような褪色をみせるので(または褪色しない)、グリーン方面に褪色しているんだとしたら、結構レアです!!こういうのがたまんないんですよ!「ギターの経年変化」が大好物のぼくとしては勃◯起モンなんですよ!!ほんとかなぁ……気のせいじゃないかなぁ……写真で見ると、まだ「青々とした青」ですけどね……肉眼で見るとなんかうーーーっすらグリーンなんですよねぇ……ほんとかなぁ……気のせいじゃな(一生やってます)
さて散々苦手だと公言していたテレキャスタイプ、あらためて弾いてみてどうだったのかと申しますと……やっぱり「ネックが体から遠い感じがするなぁ」とか「ブリッジのあたりがペッタンコだからミュートしづらいなぁ」とか思いましたよ。51才(当時)になって突然弾き慣れないギターを弾くと、いろんな不都合な点を感じてしまうもんです。弾きにくい点を自分から積極的に探そうとなど、天地神明に誓ってしていません。ぼくほどのキャリアがあると、それこそミリ程度の誤差も気がついてしまうもんなんです。
でもねえ!そんなの1週間で克服ですよ!!黙って弾けばいいんです、黙って!!なんだったんだ、あの苦手意識は!!
意外にもあっさりと苦手意識を払拭したクソベテランのぼく、家弾き用に買ったつもりが、バンドで使いたいと思うようになりました。しかし2020年といえば、記憶に新しい「コロナ禍」でしたね。Ken Yokoyama も2020年は1本のライブもできませんでした。
2021年になって、規制有りのライブができるようになりました。6月の Satanic Carnival からライブを再開できたのですが、その前にアルバム「4Wheels 9Lives」をレコーディングしていたんです。そして「待ちきれねえ!」と言わんばかりに、YouTube での生配信ライブ「Bored? Now You’re Not」を 2021年4月27日に敢行し、そこで新曲達を数曲初披露したんです。
その配信ライブでこいつはデビューした、そういう記憶があります。
最近あまりライブで弾きませんが、2021~25年くらいはよく弾きましたよ!お陰でバッチリ打痕も入り、写真には写りませんでしたけど、無数のスクラッチ痕がボディーの表面に付いています。1弦側のハイフレットのフィンガーボードは、ピックが当たりすぎて少し削れてます。
ぼくはギターを低く構えるので、ストロークの時のピッキングがどうしてもネック寄りになってしまうんですよ。
以降様々なテレキャスタイプを手にすることになるんですが、実はこいつは一番音が太いです。理由はわかりません。半分チェンバードしたのが良かったのかもしれない、ネックが鬼柾目なのが良かったのかもしれない、たまたまかもしれない。
しかしレスポールとテレキャスの中間みたいな太さなので、結構弾きたくなるギターです。逆説的に「テレキャスっぽい良さ」はほぼないようです。
まぁぼくくらいのベテランギタリストになると、ギターを弾きすぎて、哲学に行き着くんですよ。つまり何が言いたいかっつーとね、「ギターも人間も、良さがひとつありゃいい」んですよ。
最後に「Creston Electric Instruments」の公式HP のアドレスを置いておきます。よく探せばこいつの姿も見つかりますよ!
興味がある方はコンタクトを取ってみてはいかがでしょうか!!
2026/5/5


![Yokoyama New Single [The Ballad] リリース特設サイト](https://kenyokoyama.com/wp-content/uploads/2026/03/bnr-pzca120.jpg)

















