No.41 Gibson Custom Shop Randy Rhoads ’74 Les Paul Custom 2010 V.O.S.
name: R.R.
Randy Rhoads(ランディー・ローズ)というギタリストをご存知ですか?Ozzy Osbourne の初代ギタリストで、25歳でツアー中の飛行機事故で亡くなってしまった、若き天才です。独特なディストーションサウンド、そして正確なピッキングから繰り出されるクラシカルでドラマティックなフレーズは、当時のギター小僧達のハートを鷲掴みにしました。
実はボク、ギターを弾きたいと思った大きな動機のひとつに Randy の存在があるんです。まだギターを始める前の中学生だった頃、一番好きな憧れのギタリストでした。「Randy のようなギターソロが弾けたらどんなだろう……ヤリまくれ、いや、最高の気分だろうなぁ」、そんな風にエレキギターというものに夢を馳せていました。Randy の大名演にして大名曲「Mr. Clowley」のギターソロを弾きたくて、ギターを始めたようなもんなんです。
その Randy が愛用したアイコン的ギターが数本あります。まず水玉をペイントした特注1本ものの「ポルカドット V」、いまや定番となっていますが Randy のためにデザインされた Jackson の「Randy V」、そして Gibson のクリームホワイトの「74年製 Les Paul Custom」です。
こいつは Randy Rhoads シグネイチャーモデルで、Gibson が満を持してリリースした Les Paul Custom ’74 の復刻版なんです!!
Randy Rhoads のように弾きたくてギターを始めたボクですが、子どもの嗜好なんてもんはコロコロ変わりますよね。どんどん新しいものと出会って、世界はあっという間に広がっていきます。ボクも Randy のみならず、様々なギタリストのテイストを吸収していくことになります(Randy を弾くには下手くそ過ぎたという説がww)。決定打ともいえるパンクロックとの出会いもあり、アグレッシブなテイストを加えた自分のスタイルを練り上げていきました。いまのボクのギタースタイルからはあまり Randy の影響は感じられないと思います。しかしそれでも、Randy はボクの中での永遠のギターヒーローで在り続けています。
すっかり大人になって財力も身に付けた2010年のある日、「Gibson から Randy Rhoads シグネイチャー Les Paul Custom が限定復刻!」とのニュースを目にしました。これはゲットするしかない、と即座に思いました。しかし値段を見ると……ちょい思い切らないといけない数字でした(大した財力は付いてませんね)。
このシグネイチャーには「Aged」と「V.O.S.」の2種類があります。「Aged」 とは、新品のギターに傷を入れて本当のヴィンテージさながらの風合いを出す技術です。ボディーはもちろんのこと、パーツもくすませたりして、言われなければヴィンテージと見間違うほど精巧に仕上がっているものも多く、高い技術の上に成り立っている加工です。こういったシグネイチャーの場合は、本人の実機の傷や打痕を完全再現してあるものも多いです。近年ヴィンテージギターの価格高騰の影響、また Aged を施す職人達の技術の飛躍的向上もあるでしょう、Aged のギターは大人気で、完全にひとつのジャンルになったといえます。
それに対して「V.O.S.」とは Vintage Original Spec(ヴィンテージ・オリジナル・スペック)の略で、金属パーツにはくすみや錆を入れますが、ボディーは少しだけ研磨して艶を落とす程度にとどめてあります。狙いは「新しいギターを良い状態で長期間保管してある状態の再現」とされています。例えば、おじいちゃんが新品で買って60年もケースに入れて保管してあるとか、少し使ったけどクローゼットにしまって50年とか、そんなような状態ですね。それが本物のヴィンテージギターだったら、一番価値が高い状態といえます。ヴィンテージコレクター垂涎、おそらくものすごい高値で取引されるでしょう。しかしながら、そのような状態の本物のヴィンテージは最早なかなか出てこないのが実情です。そこに V.O.S. の需要もあるわけです。意見の分かれるところですが、この加工が好きな方もいれば、「中途半端な Aged」との印象を持たれる場合もあります。ボクですか?そんな中途半端なもんは要らんっすよ。
肝心のお値段、両者の値段には若干の開きが(汗) Aged で90万円弱(汗汗) V.O.S. でもなんと60万円台(気を失いながら) そいでですねぇ、Aged は全世界100本、V.O.S. が全世界200本の限定生産とのこと。計300本しかないんだ!!……300本が多いのか少ないのか分かりませんよね?ギターの世界では「日本国内ではシグネイチャーは100本売れたら大ヒット」となんとなく言われています。300本かぁ。Randy の Les Paul 復刻を待ってた人は世界中にめっちゃいるはず。しかも日本に何本入ってくるか分かりませんし……全世界でこの本数、すぐに売り切れてしまうでしょうね(白目)。
でもどうしても手に入れなければいけない個人的な流れもあったんです(黒目)!!このリリースの少し前に、先述の「ポルカドット V」の復刻版が限定生産されたんですよ!過去に数多のコピーモデルは見てきましたが、なんと Randy の1点ものを製作した人が作った、正真正銘の復刻版!もちろん欲しかったですよ!?!? この Les paul Custom のリリースを知る前なわけですから「うわっ!憧れの Randy のギターが買える!」となったわけですよ!!でも良く考えてみると……「ボク、水玉模様のフライング V、弾くかなぁ??」となってしまいましたwww Randy だから似合っていたけどwwww ボクが持ったら、ねぇ??wwwwwww 今みたいにライブでいろんなギターを取っ替え引っ替え弾くようになる前の話です。当時のボクはライブでは ESP の助六しか弾いていませんでした。それが水玉 V を突然持ち始めたら、ねぇ?wwwwwww ライブが幼稚園の出し物みたいに見えちゃうんじゃないかとwwwwww そりゃいけねぇっすwwwwwwww 「ま、まぁ、か、買うだけでも(滝のような汗)」と思い値段を見ると、なんと100万近くするじゃないですか!!もう泣く泣く諦めましたよ……フライング V を弾きたいという欲もそれほどなかったし、コレクションとして持っておくには余りにもリスキーであると判断しました。今なら水玉 V を持つのもおもしろいですけどねぇ。
こんな経緯があったので、こいつのリリースを知り「Les Paul なら持っててもおかしいわけねぇべ!これは逃すわけにはいかねぇべ!」となるのは至極当然の心の動きといえますよね(座っちゃった眼をして)。
ええ、こいつは買うと決めましたよ!!Aged と V.O.S. のどちらにするか、狙いも定めました!「そんな中途半端なもんはいらんっす」の V.O.S. にしましたよwwwwwww だって90万弱のギターはなかなかパンチありますよ……そりゃボクだって Aged が良いけど、生産本数が少ないので日本に入って来る本数も少ないだろうし、競争率も高いはず……V.O.S. だってどうなることやら。
そこでボクはミナミちゃんに相談したんですね。そしたらミナミちゃんの友人でイシバシ楽器に勤務する人を紹介してくれました。この当時イシバシ楽器お茶の水店で売り場に立っていた、倉持くんといいます。この倉持くんという人がまたアツい男で、ボクのギターライフにとってかなりのキーマンなんです。というのも、その後も数本のギターを倉持くんから買うことになったんですが……そんな中に Gretsch の White Falcon があり、その購入の際に倉持くんが当時の Gretsch の日本の担当者を呼んでくれたんですよ!そこでボクと Gretsch の担当者は意気投合し、直接連絡を取るようになり、Kenny Falcon などの開発に繋がっていったんです。当ギターコラムの No.19 のホワイトファルコンの「Leo」の項でも書いていますが、そうなんっすよ……ボクと Gretsch を繋いでくれたのは、倉持くんなんです。いやぁ、人の繋がりや気持ちほどアツいもんはこの世にはねぇっす。いまでは倉持くんとボクは当たり前のように私的に連絡を取る仲になり、欲しいギターなんかを見つけると倉持くんに相談したりしています。地元の桃も送ってくれます。人としてもとても信頼しているギター仲間です。
そんな倉持くんとも初対面であったこいつの購入時について、倉持くんは覚えているだろうか??つーわけで、倉持くんにインタビューを敢行しました!!
健「オレがミナミちゃんに連れられてイシバシ行って、Randy Rhoads モデルを買った時のことについていくつか質問したいんだけど……覚えてる??」
倉「確か健さんから御茶ノ水の店にキャンセル待ちの電話をもらって、キャンセル流れで用意出来る事になったんですよ。」
健「げっ!!オレが買おうとした時は実はもう予約で埋まってたんだ!?」
倉「Aged と V.O.S. の両方ともイシバシの入荷分は全て予約で埋まってたんです。そこでダメ元的な感じでキャンセル待ちを受けてて、確か健さんは1番じゃなくて3番目くらいだったはずです。おそらく1番と2番の方は他の楽器屋さんでもキャンセル待ちしてたんでしょう、先に手に入れたのかわかりませんが、予約が流れて健さんの順番になったはずです。
その頃はボクはまだ健さんと顔を合わせて話した事が無くて、メチャクチャ緊張した記憶があります。ミナミさんと一緒に閉店が近い時間帯に来店されて、試奏した後にギタースタンドに立てていろんな角度からニヤニヤしながら見てた記憶があります。」
健「オレ、試奏したんだ??したとしたらどんな感想言ってたか覚えてる?」
倉「試奏しましたよ!確かミナミさんに『どうかな?』って聞いてたはずです。自分的には、比較対象が無くて個体の良し悪しに迷われてた印象があったんですが、最後はギター自体の佇まいで決めたような気がします。
試奏の時はオジーのリフをたくさん弾いてた記憶があります。それ以上にピックガードの Randy Rhoads の文字を見てすごい嬉しそうだった姿を覚えてます。ミナミさんとギターを眺めるタイムが結構長かった印象があって、そこで健さん達の大人のギター選びを学びましたw
あと前にもお伝えしましたが、1ファンとして健さんにサインをお願いしたキッズ時代以外で健さんと初めてお話出来て、内心で『頑張ってきて良かった!』って心底思った日だったんです。」
倉持くん、ありがとう!!そうだったんですねぇ、予約流れで運良くゲットできたんですね。ボク、忘れちゃってましたwwww このギターの注目度/人気がどれだけ高かったのかということの証左でもありますね!
そうそう、ミナミちゃんと2人でスタンドに立てて、しばらーく眺めてたのを思い出しましたよwwww 数分とかいう感じではなかったですね、下手すりゃ雑談しながら1時間くらい眺めてたかもしれないですwwwwww パッと買って早く帰りゃいいのにねwwwwww でもこれが倉持くんの言う「大人のギター選び」です(キリッ
さて、写真を見ながら仕様の方に目を移しましょう!
まず印象的なのは、ボディーのカラー!もはや白とはいえないクリームホワイト、強烈な色してますね!黄色に近いのかなぁ?でもアンミカさんも「白って200色あんねん」っておっしゃってたから白なのかなwwww!しかし購入して13年、色も焼けてきたというか、濃くなってきた気がします。カスタム然としたバインディングやヘッドのインレイがカッコいいですね!!
ペグはシャーラー製を搭載。ヘッド裏を見てみると、ペグを交換した穴が空いているのがわかります。恐らく Randy 自身がクルーソンからシャーラーに交換し、こいつもそれを再現してあるのでしょう。
そしてシリアル、「R R 198」という数字が入っていますね!これが「Randy Rhoads モデルの198本目」ということを証明するナンバーです。なかなかギリギリの数字ですよねぇ……でも200人中198番目に買ったわけではないんですよ?「198番目に完成した個体」という意味ですよ。しかし……ここまでボクがお話したギリギリ感とも相まって、なかなかのスリリングさを伝えてくれる数字ではあります(汗)
指板は黒々としたエボニーですね。そしてネック裏を見てみると、なんとなく3ピースマホガニーの継ぎ目が、塗装の段差により出現し始めています!
74年製の Les Paul の特徴は「マホガニーの3ピースネック」と「ボディートップが3ピースメイプル」なんです。そして一番特徴的なのが「ボディーがマホガニー/メイプル/マホガニー」であること、このボディーのことを「パンケーキ構造」と呼びます。
おもしろい構造になってますよね。特に Les Paul の場合、ネックが音に与える影響が大きいと感じています。なんでワンピースではなくわざわざ3ピースにしたんでしょうか?音の伝達を考えるとワンピースの方がいいのに??しかしそれにも「1個の木材で作るとネックが曲がりやすい」、なので3ピースの張り合わせにしたという説もあります。試行錯誤していたんでしょうね。Gibson はネック折れの課題を持っていましたから、こいつにも採用されているボリュートなどを見ても、ネック全体の強度を上げることを念頭に置いての構造選択、そう捉えて良いのではないでしょうか。
さてさて、ピックガードを見て下さい!!「RANDY RHOADS」の文字が誇らしく刻まれております!!もうツラい!イケ過ぎててツラいっす!!!ボクとミナミちゃんがお店でニヤニヤしてずーっと眺めていたパーツです。なんにでも Randy の名前が入ってればアガるわけじゃないんですよ?Randy Rhoads って書いてある iPhoneケースなんて、あってもモロ要りません。
トグルスウィッチのカバーが付いてないですね。Randy 仕様なんでしょうね。
ボクが入手して13年、あまり弾いてやってないんですが(へコー)、それでも打痕、ひび割れなどが散見されます。ネックの6弦側なんか相当気合いの入ったヒビが入ってます。ボディー裏のコントロール部分のカバー付近にもガガガッと当てたような傷が!よーく見ると、ボディー正面の1弦側のホーンのあたりに、バインディングに沿ってクラックも入っています!パンケーキ構造を見せようと撮ったボディーサイドの写真にも自然なクラックが!!おおっ!これはリアルヴィンテージ化するのも早いかもしれませんね!超楽しみ!一緒に年取ってこーぜー!!!
最後にピックアップ、これはこのギターのために開発された「Super ’74 ハムバッカー」というものだそうです。Randy のサウンドといえば Dimarzio の Super Distortion が有名ですが、どうやらそれはポルカドット V に搭載していたようですね。この Super ’74 も、Super Distortion のイメージも内包しつつ、エッジーで攻撃的なサウンドを出すために製作されたのでしょう。
いやぁ、しかし色気のあるギターですよ。購入してよかったと思います!
しかしね、上記した通り……ボク、こいつあーんまり弾いてやってないんです(伏し目がちで) レコーディングでは弾きましたよ!?……こいつをゲットした後のレコーディングといったら、Ken Yokoyama 5枚目のアルバム「Best Wishes」になります。いま当時の資料を見てみますね……おおっ!!弾いてる弾いてる!「You And I, Against The World」と「Soul Survivors」という曲のギターソロをこいつで弾いてますよ!!良かったー、これで全く弾いたことなんてことになってたら、全国の「いま、こいつを欲しい人達」に怒られてしまいます。
「いま、こいつを欲しい人達」……??興味本位で「こいつの中古は市場に出てるのかなぁ?出てるとしたらいくら位で取引されてんだろ?」って調べてみました。そしたら海外でボクのと同じ V.O.S. が1本中古で出てまして……日本円に換算するとなんと200万弱でした(なるべくニヤニヤしないようにしながら)!! Aged は数本出てましたが、もちろんもっと高いです。
そっかー、売ればそこそこまとまった金にはなるのかなぁ……うっそーん!!今後いつ出番がやってくるかわからないので、絶対に手放しません!
それにボク、ケースに入れて厳重に保管しているわけじゃないんですよ。部屋に置いてあって、あんまり手に取らないけど、一緒に生活してるんすもん。そういった思い入れもありますし!
2023/8/4